静けさのなかに息づく情熱──渡辺与布 × 隅谷健人『Sonata』

この夏の舞台で、ふたりのダンサーが選んだのは、ウヴェ・ショルツ振付『Sonata』。
技術の誇示や派手な演出ではなく、音楽と舞踊が静かに響き合う、まさに“踊るというより生きるような”作品です。
アメリカンバレエシアターから、ふたりの実力派が

出演するのは、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)に所属する渡辺与布さんと隅谷健人さん。
新国立劇場バレエ団でソリストを務めたのち、2025年からABTに拠点を移した渡辺さんと、2015年からABTで多彩なレパートリーを踊り続けている隅谷さん。
日本から世界へと歩みを進めた二人が、デュオ作品に挑みます。
『Sonata』とはどんな作品か
振付家ウヴェ・ショルツは、音楽と一体化するような振付を得意とする芸術家。
この『Sonata』では、ベートーヴェンのピアノソナタ『ハンマークラヴィーア』に導かれ、ダンサーは一音一音と向き合いながら身体を預けていきます。
そこには派手な演出も、物語の展開もありません。
あるのはただ、音楽と身体が交わる「瞬間」と「静けさ」。
観る側の心が整っていないと見過ごしてしまうほどの繊細な呼吸が、舞台上に広がります。
クラシックの基礎に忠実な現代作品
この作品の動きは、クラシックバレエの原則に忠実です。
足先の伸び、ポール・ド・ブラの透明感、ラインの正確さ。
すべての所作が、美しさと制御のもとに築かれています。
しかし同時に、それは“音に溶け込むための動き”でもあります。
ただ“魅せる”のではなく、音楽そのものを可視化するように。
踊り手には、極限の集中と感受性が求められます。
この作品をガラで踊る意味
ガラという舞台で『Sonata』を踊ることは、“うまさ”を示すことではありません。
派手な照明や演出がなくとも、観客の心に深く残る舞台。
渡辺与布さんと隅谷健人さんという、経験と確かな技術を持ったふたりが、それをどのように表現するのか。
その時間を、ぜひとも劇場で感じていただけたら嬉しいです。
この演目は配信がございません。
舞台上の空気、音楽、身体のすべてが揃ったときにだけ生まれる、あの「一瞬」。
その瞬間に立ち会えるのは、劇場にお越しくださった方だけです。